稀代の発想が生んだ全翼機 XF5U フライングパンケーキ
概要
パンケーキとは、主におやつに食べられる甘いスイーツのことである
メープルシロップ、クリーム アイスクリームとそのトッピングは好みの数だけあるといえよう
と、冗談はここまでにして置き
本機はアメリカが開発した試作戦闘機 主な目的は円形翼機による全翼機の試作と実用化の検証
そう、円盤である このいかにもおかしな形の機体ではあるが、
戦争が長引いていた場合は完成していた可能性があったという…(制空権を確保する大量の円盤…SFかな?)
因みに、この機体に近いのはB-2やF-117といった全翼機であり、ある意味全翼機の先祖とも言える。
信じたくはないが、本当に先祖なのである。
開発 -世間を騒がした理論実証機-
この機体の始まりはなんと「第二次世界大戦前」まで遡る。
当時、アメリカ航空宇宙局「NASA」の前型であるアメリカ航空諮問委員会「NACA」にいた
空気力学者の設計によって始まった。
設計者は翼が大きく、負荷の少ない航空機として円盤型を設計
理論上ではプロペラの翼から発生する気流も使えるほど優秀な設計である。
(簡単に言えば日本の凧である 少し風吹いたら浮き出す特性を使っているのでふわふわ飛ぶとか)
また、円盤型形状は翼端渦という航空機が後ろに引っ張られる力も最小限になる計上で
戦闘機としても頑丈な構造であったことから、当時としては画期的な設計であった。
その後、1937年に設計の理論を証明
そして1942年に、海軍とともに社内実験機として「V-173」が完成
初飛行に成功し、その後も200回もの飛行試験を行ったとされる。
(まず200回もあれが飛んでたという光景があったというのが驚き
尚、試験飛行中に市民からはUFOと間違われ、記事にもなっている 丸いから仕方ないよね)
この時の仕様は わずか80馬力のエンジン二つのみでの飛行だったが
最高時速223km 最小離陸距離6m 最低時速64kmという記録を出している。
なあ、最高時速おかしくね? というかなんで飛べるのそれ?
特に最小離陸距離は今でいうSTOL機というものに分類されるほどの短さで
原理としてはあのF-22 ラプターの祖先ともいえるのである。
(STOL機としては非常に優秀で、あの日本の空母 鳳翔からでも発艦可能)
こちらが社内実証機V-173 こう見るとほとんど円盤である
XF5Uに関しては処分され、現存機は残念ながら残っていない
軍用機としての開発 時代の変化のの中で生まれた試作機
実証機としてのV-173はとても優秀であった
短い滑走距離 非力なエンジンでの飛行実証 どれも好成績であったため
その優秀さに期待し、1944年に試作戦闘機「XF5U-1」二機の開発が始まった。
(まずSTOL機自体とんでもなく珍しいんだけどね)
エンジンは1600馬力のエンジンを両端に二機、
装備は12.7mm機関砲 又は20mm機関銃を六門と最大454kgの爆弾を搭載する設計となった
つまり戦闘機であり、しかも理論上では時速775kmもの速度が出る
もはやパンケーキではなくフリスビーである 当たると痛いじゃすまないぞ
しかし、あまりにも画期的な設計のために開発は難航し
更には製造するメーカーは、
F4UやTBU シーウルフといった機体の開発や生産改良で人手が足りなくなっており
ようやく試作機が完成したのは1945年8月、第二次世界大戦終結後のことであった
(というか、よくこんな円形を作れたな そして重装備だが設計図だと機関銃の位置が不明)
試験運用開始時は専用の大型プロペラの製造が間に合っておらず、F4Uのプロペラを代用して試験を行っていた。
こちらがXF5U これは
F4Uのプロペラを搭載した姿
なんと、新型プロペラ搭載状態のXF5Uである
運用 飛ぶことはなかった軍用機
1947年 新型プロペラが完成し、XF5Uに搭載されたが
同年3月にXF5U計画は中止 XF5Uは一度も飛ぶことなく、解体処分が決定された
理由としては、1946年にXプレーンシリーズの祖である「XS-1」の飛行試験が成功したことによる
航空機のジェットエンジン化の波と、前方発射型のロケット弾が
大型プロペラにより搭載することができないという、構造上の問題が主な原因とされている。
むしろなんで今まで気づかなかったんだ…
解体時、航空機のスクラップでは通常の手法では解体が不可能とされ、解体に時間がかかったらしい
皮肉なことに、設計から言われていた頑丈な構造は最期の瞬間で実証されたことになる
(一説によると、建設用重機を使用して破壊したとか いくらなんでも頑丈過ぎるだろ…)
その後の影響
XF5Uは時代の表には姿を見せれなかったが、
V-173によってもたらされた実証データは後の全翼機の発展に大いに役立っている
なんか無人機の開発にこの機体のデータが使われてるとかなんとか
余談 遠くにあった、もう一つのフライングパンケーキ
さて、皆さんはA.S.6という航空機をご存じだろうか
またの名をMe-600 Meでわかる方もいるが これはドイツのXF5Uなのである。
きっかけは1939年 エンジン搭載型のエアロモデルの大会で出場した円形のモデルからである
1944年に損傷したBf109からパーツをとり開発、エンジンはBf108のものを搭載している
そして、できた航空機はこちら
はい、どこをどう見てもXF5Uです
しかし、この機体はエンジンは単発でXF5Uと違い飛行試験を四回行っている
結果はうまく飛べずに終わったらしいが、その後に設計されたのがAS7 つまりMe-600だという
結局、完成することはなかったらしいが 試作機であるAS6のその後の行方も分かっていない。
なお、もしMe600が作られていたら2000馬力のエンジンと6門のMk-108機関砲が搭載されたらしい。
XF5Uといい、やけ出力の大きいエンジンと砲数の多い設計である。
もし両方の機体が完成していたら どこかで円盤同士の航空戦があったかもしれない…
スター・〇ォーズじゃないかそれ